2025年9月、After the Rain(そらるさん×まふまふさん)が新曲『叢雲に風、花に月』を公開しました。
公開直後からSNSでは「懐かしいAtRの和ロックが帰ってきた」と大きな話題に。
この記事では、まふまふさんの日本語表現がなぜ美しいと感じられるのかを、5つの理由と歌詞の具体例から紐解いていきます。
まふまふの日本語表現が美しい理由5選
1)古典表現を現代に呼び戻す“借景”
例えば:「叢雲に風、花に月」
曲全体を象徴するフレーズで、ことわざ「月に叢雲、花に風」を反転させています。
ことわざ本来の意味は“美しいものに限って障害が入りやすい”。
まふまふさんはこれを逆順に置くことで、「先に影を見せ、その後に光を示す」という物語的な転換を生み出しています。
タイトルそのものが歌詞世界の導入となり、聴く人を“儚さ”へ引き込む仕掛けです。
2)当て字・ふりがなで“二層の意味”を作る
例えば:「悔やむと書いてミライ」
字面は「悔やむ」=過去への後悔。しかし読みは「未来」として提示されます。
ここでまふまふさんは、「後悔の中にしか未来は芽生えない」という逆説を描きます。
歌詞の紙面上と歌声としての響きが異なる二重構造になり、聴き手は「本当に意味しているのはどちらか?」と考えさせられます。
この二層性こそが“言葉の美しさ”に直結しています。
3)母音設計と拍感の統合(音楽と言葉の同時進行)
例えば:「夢のまた夢」のサビに繰り返される“〜あ”“〜い”で終わるフレーズ
「夢のまた夢」という反復に乗せて、「あ」「い」の開放母音が高音で伸びやかに響きます。
母音の選び方で“上へ抜けていく”感覚が強調され、まふまふさんの透明な高音と相まって、「夢の世界が天へと広がっていく」印象を与えます。
これは歌詞の内容と音響的効果が一致する設計であり、日本語の響きを最大限に活かした例です。
4)季節語・花鳥風月による象徴体系
「四季折々に揺蕩いて」に出てくる“春に咲いた花”“夏の夜風”“秋の紅葉”“冬の雪”のイメージ
これらの言葉が連続的に配置されることで、聴き手の心に四季の情景が浮かび上がります。
日本語特有の季語の力を借りて、感情の移ろいと自然の循環を重ね合わせているのです。
まふまふさんは、「自然現象を人の感情の比喩に変換する」ことで、日本語の持つ文化的厚みを音楽に取り入れています。
5)文字組み・記号がつくる視覚的リズム
例えば:「夕刻、夢ト見紛ウ」
ここでは「夢ト」というカタカナ混じりの表記や、「夕刻、」と句読点を置くリズムが独特です。
文字として読んだときにすでに“切れ目”が感じられ、曖昧な夕暮れの空気を紙面上でも表現しています。
「読んで曖昧、歌って切ない」という二重の効果が、表記の工夫で可能になっているのです。
まふまふさんが好む言葉の傾向とは?

まふまふさんの歌詞を振り返ると、漢字二字熟語や古語、そして季語が多用されていることがわかります。
「叢雲」「曼珠沙華」「虚空」など、重みや儚さを感じさせる語彙を好んで選びます。
さらに、それらに柔らかい和語を組み合わせることで、“硬さと柔らかさ”の対比が生まれています。このバランス感覚こそ、歌詞全体に独自の美学を与えているのです。
海外ファンから見た日本語表現の魅力
海外リスナーの間では
「意味は完全には理解できないけれど、美しい響きとして心に残る」
という声が多く聞かれます。特に、漢字の視覚的インパクトや、母音の響きが多い日本語ならではのリズムは翻訳できない部分。
翻訳字幕では表しきれない“余白”があるからこそ、世界中のファンが日本語のままで聴くことに価値を感じています。
他アーティストとの比較で見える独自性
日本語表現に定評のあるアーティストと比較すると、その独自性がより鮮明になります。
米津玄師さんが日常語を寓話的に膨らませるタイプ、Aimerさんが声色と詩的言葉を織り交ぜるタイプだとすれば、
まふまふさんは「古典や難語を音楽的に設計し直す」タイプと言えるでしょう。
この違いが、唯一無二の作詞スタイルを生み出しています。
ファンが選ぶ“心に残る一節”
SNSでは
- 「悔やむと書いてミライ」
- 「ただ可憐でいられるように」
といったフレーズが特に人気です。
これらは短いながらも強烈なイメージを喚起し、日常の中でも引用されやすい言葉。
ファンが自然に“自分の言葉”として使えるようになる点も、まふまふさんの歌詞が支持される理由の一つです。
まとめ
まふまふさんの歌詞が美しいと感じられるのは、単に難しい言葉を使うからではありません。
古典的な表現を現代に呼び戻し、当て字やふりがなで二重の意味を仕込み、母音やリズムまで設計して音楽と一体化させているからです。
さらに、季節や自然を象徴にして感情を重ね、文字の見せ方で視覚的なリズムまで生み出す。こうした工夫が重なり合うことで、日本語が本来持つ美しさがより鮮やかに浮かび上がります。
新曲『叢雲に風、花に月』は、その集大成とも言える一曲。ライブでどのように響くのか、今後の展開にますます期待が高まります。
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